zton2021の曖昧日記

日々思うことを書きます。数学は学習メモとして、勉強したこと、思うことを一生懸命書いていますが間違い勘違いも含むかもしれません。間違いに気がついた時点で、加筆修正するつもりです。(注)数式はMathMLで表記し、Safariで表示を確認しています。Safari以外のブラウザでは表示がおかしいことがあるようです。

ガロア理論曖昧メモ5(ガロア拡大)

f(X)はn次元K係数多項式、その根を  α 1 , α 2 , , α n とするとき、

    L = K α 1 , α 2 , , α n   はKの代数拡大で、ガロア拡大でもある。

つまり、

(1)Lの任意の元μは、なんらかのK係数の多項式の根になっており、

(2)μの共役元(μを根とするK係数多項式のうち既約なものに対する他の根)は再びLの元である。

 

今回は(2)について考える。(注1)

Lの元μを考える。(1)よりμを根とするK係数多項式が存在する。その既約因子(K係数多項式の範囲で既約なもの)をg(X)とする。

この時g(X)の任意の根ξ もLの元となっている、ということである。

 

文献の証明をを眺めても(例によって鮮やかすぎて)よくわからない。よくはわからないが、じーっと考え続けると朧げに見えてくるものはある。

 

g(X)は既約だから、その二つの根μ、ξについてはその区別は無いに等しい、と思える。(注2)

したがって、Kにμとξを追加した二つの体K(μ)とK(ξ)に区別はない。それぞれにf(X)の根を追加して、

K µ , α 1 , α 2 , , α n   と  K ξ , α 1 , α 2 , , α n を作ると、これらも区別はないはずである。

μは L = K α 1 , α 2 , . . . , α n  の元であったから、 L = K µ , α 1 , α 2 , , α n = K ξ , α 1 , α 2 , , α n

したがって、ξもLの元となる。

という大まかな流れだろうが、きちんと証明するのは当然ながら難しい。

 

色々な文献を眺めるに、まず一般論として次の2つの補題を用意する。

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[補題1].  

体K1と体K2が同型であり、その同型写像をπとする。

K1上の既約多項式 f1(X) とK2上の既約多項式 f2(X)がπ(f1)=f2 を満たすとする。(f1の係数をπで移し替えたものがf2に等しいとする)

f1(X)とf2(X)の根 θ1とθ2について、それぞれを体K1とK2に追加した拡大体K1(θ1)と K2(θ2)をつくると、これらは同型であり、その同型写像σとして、σ|K1=π、σ(θ1)=θ2  なるものが存在する。

[補題2].

体K1と体K2が同型であり、その同型写像をσとする。

K1上の多項式 f1(X) とK2上の多項式 f2(X)がσ(f1)=f2 を満たすとする。(f1の係数をσで移し替えたものがf2に等しいとする。

f1、f2は既約である必要はない)

次に、L1をK1にf1(X)の全ての根を追加した拡大体、L2をK2にf2(X)の全ての根を追加した拡大体 とする。

このとき 同型写像τ:L1 →L2で τ|K1=σ であるものが存在する。

なお、多項式の全ての根を追加した拡大体としては最小分解体(注目している多項式の根全てを含むもっとも小さい体)を考えるものとする。

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g(X)とその根μとξについて補題1より(K1=K2=K、f1=f2=g、πを恒等写像idK、θ1=μ、θ2=ξとして適用)

同型写像σ:K(μ)→K(ξ) でσ(μ)=ξ 、σ|K=idK となるものが存在する。

これと、f(X)に対して補題2を適用する。

σ|K=idK であり、f(X)はK係数だから、σ(f)=f したがって、fとσ(f)の根の集合は一致する。

L 1 = K µ , α 1 , α 2 , , α n

L 2 = K ξ , α 1 , α 2 , , α n

補題2より、同型写像τ:L1 →L2で τ|K(μ) =σ であるものが存在する。σ|K=idK だからτはKの元を不変とする同型写像である。

μは L = K α 1 , α 2 , , α n の元だから L = K α 1 , α 2 , , α n = K µ , α 1 , α 2 , , α n = L 1
したがって、ξはL2の元だからそのτの逆像ηはLの元であり、 α 1 , α 2 , , α n   のK係数の式である。


τはKの元を不変とする同型写像なので、τ(f)=f であり、τはfの根
  α 1 , α 2 , , α n   の置換を定める(fの根をfの根に重複なく写す)。

したがって ξ=τ(η) は  α 1 , α 2 , , α n のK係数式である。つまり、ξはLの元。

 

注も含めて長くなったので、補題1、2に関するメモは続く。

 

(注1)逆も成り立つ

LがKの有限次元のガロア拡大体のとき、K係数多項式f(x)が存在して、LはKをその全ての根を追加して拡大したものである。

 

(注2)Kの中で既約多項式g(X)は根を持たない。形式的にg(X)の根を定義して、それをKに追加するためには、K係数多項式環K[X]を極大イデアル(g(X))で割れば良い。

K[X]/(g(X)) をMとおくと、M係数多項式と考えたg1(Y) (もとのXと区別して、不定元の名前をYとしたもの、係数はg(X)のK係数そのままとする)について、X+(g(X))はg1(Y)の根となる。

このX+(g(X))の名前をμと付けようがξと付けようがなんら区別は無い。とりあえずμと名付けると、M係数多項式g1(Y)は一次元の既約因子 (Yーμ)を持つ。

他に1次元の既約因子を持てば(Mの中で根を持てば)それら全てでg1(X)を割って残ったM係数多項式の既約因子それぞれについて同様のことを続ければ、最後にはg(X)の全ての根を追加したKの拡大体にたどり着く。

そうなのだろうが、、、全ての根を形式的に追加できただけであり、根そのものについてはぼんやりとしたままである。Kの世界の中の言葉を使って根を具体的に説明してほしいのである。

 

 有理数体Qにおいて、 「X 2 - 2  はQの中で根を持ちません。その根を  2 と名付け、Qに追加しました」、と言われても根そのものについて何かが新しくわかるわけではない。  2 がQの中で 1.414...で近似されるということを同時に教えてほしいのである。

 べき根は馴染みがあり近似しやすいので、多項式の根はべき根で表現されると嬉しい。だからガロア理論に惹かれる。

 ぼんやりとわかっていたことを、キチンと定式化(抽象化)して説明することはとても意味がある。そして、定式化の結果や、それを行う過程で判明した事実や手法を使って、新しい情報が生み出されれば、定式化した意味があると言うものである。